2019年11月の記事一覧

お祝い 訪れた彼の目的は・・・

11月29日(金) ほぼ毎日・校長 Vol.142 行ったんですね名古屋城。いいなぁ


 このブログに何度も登場している(母とも一緒に登場している)歴史研究部の彼がやってきた。手にしているのは「合格証書」。難関の大学、尊敬する教授のいる希望の大学の合格証書である。あの時「受験報告ではなく合格報告にきて欲しいなぁ、そうあってくれるとなお嬉しいな」と語ったことを覚えていて、きてくれたのである。「おめでとう」の一声で迎えた。
 ところが彼の口から発せられたのは、「校長先生、行ったんですね名古屋城。G20の関係で無理かと思っていたのに、行けたんですね。」であった。本題であろう「合格」とそれに関わる話を・・・と思っても、「あの天守閣は、今度木造建築・・・」「戦火で焼失して以来・・・」「今は入れない天守閣の・・・」矢継ぎ早に出てくる。彼の「城」に関する興味関心はすごい。興味関心だけでなく並外れた知見を有している。「えぇ、ブログの写真、記事無くなったんですかぁ?残念」話が尽きないのである。
 しばらく彼のお話しに付き合いをさせていただいて、合格証書を手に一枚パシャリ。下宿はどうする。「大学から一駅離れたいいアパートが見つかったんです。決めてきました。」『きっと母は泣いたんだろうな』と思っていると、その思いを察するように、「在学中は何度も母にきてもらおうと思います。古都の観光を4年間でいやというほどしてもらいます」と言葉をかけて部屋を後にした。

 大学進学の頃に母に対してこんな気持ち持っていたかな?拙かった自分のそのことと比べて、人間的にもいい成長していると感じた。いい成長をしています生徒たち。市原中央高等学校、いいね。

花丸 この日の彼女は笑顔だった

11月28日(木) ほぼ毎日・校長 Vol.141 よかったね いい思い出にできて

 一人の女子生徒が、担任の先生と一緒に校長室にやってきた。入ってくるなり笑顔である。「ありがとうございました。おかげさまで・・・よかった。・・・嬉しかった。」
 彼女と話をしたのは夜の帳の降りた琵琶湖畔。修学旅行のディナークルーズ船に乗り込む列の中。話しかけてくれた。「今度、校長室に伺っていいですか?」「ええよぉ」関西の空気を吸った途端、DNAに組み込まれた関西の血が蘇る。自然に関西のおじさんになっている。船の逆光でシルエットでしか見えなかった彼女の横顔だが、妙に印象に残っていた。
 翌日の宿のロビーのソファで、大粒の涙を流している女子生徒。見るなり昨夜の女子生徒だとわかった。「君かぁ。どうしたの?」絞るように泣きじゃくりながら事情を話してくれた。涙の質を本人もわからなかっただろう。「ごめんなさい」我にもあらず受難者となった彼女は、その心を「申し訳ない」という気持ちでいっぱいにして、何層もの感情が折り重なった重みに潰れそうになって、それがフローして涙になって、瞳からボロボロこぼれ落ちている。
 エンパシーとシンパシーの話。こんな時にそんな難しい話はいらない。「ごめんね」と相手の気持ちを察しているだけでなく、「ごめんね」が向けられる相手の心に感情移入をしてみよう。今君が受難者となったことを友人たちはどう思っているだろう。誰も悪くない、悪くないけど彼女の身の上に難が降りかかった。そんな状況の中で、受難者本人が「申し訳ない」と思って塞ぎ込んでいる。余計に辛いのでは?「さっきはごめんね。心配かけてごめんね。でも、もう大丈夫。楽しう」と言ってくれた方がずっといい。顔をあげて、笑顔になってエンパしーを実行してみよう。そんな意味のことを語った。
 強い子だった。まだ涙の止まらない瞳をこちらに向けて、こくりと小さくうなずいた。よかった。彼女のバッグにBob'sBearTim(ティム)がぶら下がっていた。一つ年上の姉が土産に買ってきてくれたのだと教えてくれた。
 「校長、いい子だねぇ」Tim(ティム)が、小さなピンクの舌をぺろりと出して、語りかけているように思えた。いい生徒が集っています。市原中央高等学校。自慢です。

お辞儀

ほぼ毎日・校長 Vol.136〜140は欠番です

重要 仕上がったんです、見ていただけますか?

11月20日(水) ほぼ毎日・校長 Vol.134 幸せな気分です


 Vol123に登場した美術専攻の女子2人がやってきた。「先生、あの時話していた絵が出来上がったのです。明日梱包して展覧会に送るので、先生に見てもらおうと思って・・・」と来室の趣旨を話してくれた。以前にもこういうシチュエーションに幾度か出会っている。「先生、楽曲が仕上がったんです。聞いていただけますか?」ある高校の吹奏楽部。「先生、結婚するんです。親に会う前に彼に会ってもらえますか」2児の母になった教え子などなど、こんなことがあるんだが、日髙に見てもらいたい、会ってもらいたい。こんなに嬉しいことはないのである。
 拝見すると2人の絵の素晴らしいこと。自分の背丈ほどある大きなキャンパスに、老婆(彼女の曽祖母)をモデルに写実的に描いている。あの時はまだ線画だった。時間が足りないことを憂いながら懸命に描き続けたのだろう。すごい力である。「いいねぇ。絵の道に進まないなんてもったいないよ」とからかうと、やはり「サカナ」であった。自分が飼育している黒鯛の幼魚にドジョウを食べさせている写真。水族館で撮影したエイやイルカの写真。ご披露いただきました。本当に好きなんだね。
 もう一人の彼女の作品は、木炭で描いた「流動」。流動から連想される様々なものが、一つの大きなうねりのように塊りとして描かれ、一定方向への流れを見せている。よく見ると時計。時の「流れ」が思考言語に会ったのかしら?思いついたら不躾でも聞いてみる。「流動から連想された思考言語がこうしたビジュアルに変更する、思考の変容はどんなもの?」かなり難しい質問だったが、「ことば」が自然に「え」に移ろっていく。そんなイメージを語ってくれた。面白いね。
 二人にすっかりいい気分にしていただいた私から、ささやかなお返し。水爆実験が行われた「ビキニ環礁」。女性のセパレートの水着をビキニっていうだろう。あれは核実験に対する抗議からデザイナーが名付けたんだよ。そこの景色と野生のイルカの話しを聞いてもらった。

 豊かなお昼時間をいただきました。情緒豊かな市原中央高等学校生、いいなぁ。

 明日から修学旅行。彼女たちが今日きてくれなかったら、この瞬間(とき)はなかった。ありがとう、感謝します。