2020年9月の記事一覧

?! 前期終業式の放送講話

9月28日(月) ほぼ毎日・校長 Vol.174

前期終業式の放送講話

前期の終業を迎えるにあたり、生徒諸君に一言お伝えしておきたい。話は目で聴くといいながら、諸君の表情が見えないことが残念である。
この歳になって自分の人生を振り返り、君たちの行末を思うとき、これからの人生を歩む中で、自分を支えている様々なことの原点を辿ってみると、高校時代の体験、経験、考えに行き着くことが多い。
実はそうではないのだろうけれど、明確に辿れるのはやはり高校時代である。私ばかりではないだろうと思う。その意味で、君たちには日々を大切にしてほしいと切に願う。
ジェネレーションリングを知っているだろう。孫の世代、子の世代、親の世代、それぞれを円にする。孫と親の円が点で接し、その点を中心に同じ半径の円を描く。
一つの円は「One Generation」(60年)である。親が人生の真っ只中、社会の担い手である頃に子が生まれ、その子が社会の担い手になるころに、親は社会の一線から退く、同時に孫の誕生。我々の文化の継承はこうした交わりの中にある。はずである。
一つの文化が生まれるためには、その文化が誕生する過程の「よき」も「あしき」も噛み分ることがあって、混ざり合って誕生してくるものである。それがそうではなくなった。一段ずつ上がるべき階段を、二段も三段も飛び上がるようにして開花すると、精神がついていかない。気息奄々(きそく・えんえん)とした日本人の姿がそこのある。「内発的に変化して行くが好かろう」と語ったのは漱石であった。(現代日本の開花) 私は今になってそれが理解できる気がする。そんな時代だから、より「夢中になるもの」を見つけ、瞬間(とき)を大切にしてほしい。

先日、数名の生徒と話をする機会があった。
他の者に誇れる何か夢中になっているものはあるか?
1人の生徒は、きっぱりと答えた。勉強です。誰にも負けないだけやっている自信があります。進学を考えているんだから当然です。効率や身についたということについては、人より優れているかどうかはわかりませんが、今までの中で、これほど「やっているな」というほど勉強に打ち込んでいることはありません。
ある生徒は自信なさげに答えた。「それがないんです」「じゃあ、少しの時間先生とゲームをやろう」ゲームのあとで、その生徒は「人生観変わりました。目標が見えた気がします」と答えた。生まれ変わった気がする。真剣に目標に向かって頑張ったことがない過去を振り返り、スタートをする決意をしたという。頑張ってほしい。
この秋は君たちにとって人生のターニングポイントである。ほんの少しの経験が、ほんの少しの振り返りが、大きな前進を生む。コロナ禍で、全てがこれまでの「今まで通り」を見つめ直させている。見つめ直すいい機会だ。見つめ直せばいい。しかしその中に、不易、不変、不断は必ずある。上質で豊かな秋を過ごしてほしいと思う。

 

晴れ 自分で作り上げるものなんだよぉ

9月16日(水) ほぼ毎日・校長 Vol.173 書く気になった

執筆というほどではないが、ブログを書くにも筆のノリがある。ウダウダとまとわり付く問題に煩わされていると、一向に生徒との触れ合いに気持ちが向かない。『つまんないのぉー』なんて今日も一人で食事をしていると、ドアをノックする音が聞こえた。『校長先生、ちょっといいですかぁ?どうして「ちょっといいですか?」なんだろう。ちょっとであった試しがない。』覚悟を決め、それでも明るく「はーい、どうぞぉ」。予想に反して、「先生、お一人ですか?」と明らかに生徒の声。「ですよ。どうぞお入りなさい」二人の女子生徒が入ってきた。「へぇ」とか「ふーん」とか言いながら、初めてみる空間をひとしきり見回して、ソファーに腰掛けた。
 「悩みがあるんです」と一人がいうと、その言葉が終わらないうちに「私は付き添い、おまけのようなもの」。妙に連携が取れた、いい相方のようである。さらりと「悩みが」と言っていたので、それほどでもないのかな?と思って聞くと、かなり深い。なんとか答えてあげたいという気持ちで、空海の密教の世界まで入り込んでしまった。「今言ったように『自分』ってね、自分で作り上げるものなんだよ」抽象的でわかりづらい説明であったろうに、「先生、わかった気がする」「少し(悩みが)溶けた気がする」と言って、「ねぇ」と声を合わせて顔を見つめ合った。コンビネーションの良さを感じながら、「お名前は?」二人は同じような悪戯っぽい笑みを浮かべて、「◯◯」二人合わせて「◯◯・◯◯」ファーストネームが同じだった。
 「ありがとうございました」と元気よく帰っていく背中に、「今度はお弁当持っておいで、一緒に食べよう」と語りかけると、振り返った目が「本当にいいんですか?」と語っていた。「はーい」という元気な声が、廊下に消えていった。

 今日の秋晴れのような清々しい、気持ちになった。いい1日になりそうだ。