2019年12月の記事一覧

お祝い 生徒がくれた贈り物 Part2

12月25日(水) ほぼ毎日・校長 Vol.150 合格報告と学びの共有

 「先生、お時間よろしいですか?」ドアをノックする音と共に、丁寧な挨拶で2人の生徒が入ってきた。応接に座って話し込んでいた教員が「オヤ、生徒ですね。では私はこれで」と言って立ち上がった。心遣いが嬉しかった。
 一人はVol.120に登場した「源氏物語」を読んでいる彼女である。「久しぶりだね」と声をかけると「合格報告に友だちときました」と言ってもう一人の彼女を紹介してくれた。表彰式の壇上で「成績優秀者」として何度か顔を見たことのある彼女。部屋を訪ねてくれるのは初めてである。二人が報告してくれた「合格」は立派なものである。「ところでそこでなにを学びたいの?」背伸びをさせるような質問をしてみた。思いもよらぬ答えが返ってきた。「言語学なんです」専門に研究している友人たちでもうまく設定できない、多様な切り口のある分野である。その学びにむけた思いを称賛し、語ってくれた学問の世界に感心した。あまりに素晴らしいと感じたので、ソシュールの「ラング」と「パロール」の話の入り口を語ってみたところで、さらに驚いた。彼女は既にこの単語だけでなく、意味までも知っていたのである。
 「源氏」を片手に廊下を歩いている彼女といい、ソシュールの世界の扉を開いている彼女といい、うちの生徒の新たな一面を発見した気がした。市原中央高等学校、すごいです。いいね。

雪 生徒がくれた贈り物 Part1

12月24日(火) ほぼ毎日・校長 Vol.149 3年生を送る会
 表彰式の後、校長講話、3年生を送る会が行われた。講話を終えて壇上からフロアに帰ってくると、生徒会の諸君が「それではこれから3年生を送る会の準備に入りますので、少しお待ちください」というアナウンスをする。全校の生徒がおかしな動きをしている。静かな水面に様々な絵具を浮かべ、静かに待っていると、わずかな空気の動きで緩やかに模様を作って線画ができていく、あんな動きである。一定の法則性を持っていて、それでいて明確な意思によって動いているのではない、緩やかで「ためらい」を感じさせるようなそんな動きである。よく見ると2年生の動きが1年生に伝播していることがわかる。そう、3年のためにステージ前のフロアに空間を作ろうとしているのである。2年生は昨年の経験があるからスムーズである。1年はなにが起こっているかわからなく、やがて納得して動き始めるから、タイムラグがある。初めての経験であったから、近くにいる教員に尋ねた。「このように動くことが予め指導されているのですか?」「いいえ、自然な流れのようです」
 誰が指示をしているわけではない。誰が促しているわけでもない。自然にこの行動がとれている。「3年生のために」が大きなうねりとなっているのである。「すごい」と思った。

3年生を送る会 校長挨拶
 さほど君たちとは遠くない先輩に、担任として先生が記した「贈る言葉」に接する機会があった。奇しくもこの場で語っておこうと思っていた内容と合致したので、紹介していこうと思う。
その先生は語る。Society5.0の社会が進み、情報化・グローバル化が進む中で、その大きなうねりは、個々人が希望する希望しないに関わらず押し寄せて、君たちを巻き込んでいく。今まで持っていた価値観や常識は、電車の車窓の景色のようにあっという間に遠のき、過去のもの、古きもの、異なるものに変わって行き、通用しないものになっていく。
 その中で必要とされる力は、仲間とのリレーションによって課題を解決する協働力・共生力と、今ある姿に疑問を感じる批判力である。よく語られる「生きる力」「真の学力」につながるものであるが、生徒諸君に直接関わってきた担任の先生が、卒業という節目で語る言葉であるが故により説得力がある。
 もう一つこの力に付け加えるなら、シンパシーに止まらず、エンパシーまでもができる「こころ」を持つことである。この学校での3年間を振り返る時、ここで語られた力の礎が築かれていることを切に願う。これからが本番の諸君が多い。体調を整えて、頑張って欲しい。やり抜いて欲しいと切に願う。

注意 こだわりが生んだ大切なもの

12月17日(火) ほぼ毎日・校長 Vol.148 こちらこそありがとう

 覚えているだろうか、先日このブログ(Vol144)で紹介した彼女。笑顔で部屋に入ってきた。愛犬自慢、拘っているんです、「また来ていいですか?」「ええよぉ」、パラサイトの彼女である。あの時は心底思い詰めたような感じがあった、手元の手帳に大切に挟んだメモを見ながら、確かに涙を流していた。私との会話の中で、自分の思いにスラッシュ「/」を引くように区切りをつけて、しっかり結んだ唇に「決」の文字が浮き出てくるような、キッパリとした表情を見せる。笑顔で「やってみます」。竹を割ったような性格とはこのことを言うのだろうと思った。
 その彼女が、今日は最初から笑顔である。しかし私にはその笑顔が、重い我慢と自律によって裏打ちされていることが見て取れた。笑っているが心が笑っていない。案の定彼女の口からは「ダメでしたぁ」と言う一言。「こんなもんですよね」あらら、こんなに若い頃に「世間」を感じ取らせてしまった。こりゃぁいかんと思った戸惑いは、次の言葉で払拭された。「『なんとかなる』『無理にでもなんとかしてほしい』ではないんです。分かって欲しかっただけなんです、きっと」自分を見つめ直した時にそう見えたのだろう。「それを校長先生がしてくださったので」(←ここ太文字にしたい)そんな風にとってくれているなんて、嬉しい限りなのである。
 康成の「伊豆の踊り子」だっただろうか。「いいひとはいいね」踊り子とその連れの会話の中に、自分に対する「いい人」評価を聞いた主人公は、素直に自分をいい人と感じることができたと言う描写があったことを思い出した。彼女の一言で私は、自分を本当にいい人と、素直に、自分で、照れもなく思っていた。彼女の笑顔も、さっきの笑顔とは違う。心も笑顔になっている。こだわりが産んだ副産物?なのかな。将来彼女もきっとこんな思いをしたりさせたりする経験をしてくれるのだろうな。
 「パラサイト、拘ってね」「はーい」明るく部屋を出て行ってしまった。「また来ていいですか?」「ええよぉ」は、今回はなかった。少し寂しい。

  いい瞬間(とき)を過ごしています。市原中央高等学校生。いいね!

お祝い これもすごいことなのです 英語スピーチコンテスト

12月14日(土) ほぼ毎日・校長 Vol.147 関東大会第3位


 第13回関東甲信越地区高等学校英語スピーチコンテスト(於:宇都宮共和大学)に生徒引率に行っている教員から吉報SNSが届いた。英語コース2年生のJade Alisa Teeさんが、第2部の第3位に入賞した。千葉県で準優勝、嬉しいけど少し悔しい。関東大会では全国に出られるように頑張りたいと語っていた彼女は素晴らしいスピーチを披露したという。全国大会への出場は優勝者のみ。残念ながら彼女は果たせなかったが、新しい目標の一つとしてスタートを切ったという。
 英語コースのグローバルリーダープログラムでの様々な体験が、彼女のスピーチの輝きに現れてきているのだと指導にあたっている教員は語ってくれた。小学生と共に英語で交流の場面でも、笑顔とボディランゲージでわかりやすく会話を楽しんでいる姿を拝見した。

 すごいな。市原中央高等学校。この英語コースの礎のプログラムが、次年度コースとしてスタートする。グローバルリーダーコース楽しみです。期待してください。

具体的な取組はCLCホームページへどうぞ →

お祝い おめでとう!佐藤太清大賞受賞!これ、すごいことなんです。

12月11日(水) ほぼ毎日・校長 Vol.146 こんなにすごい賞だとは思わなかった

校長先生
おはようございます。美術科の●●です。ただいま3年生の▲▲のお母様からお電話頂きました。絵を出品しておりました佐藤大清賞展で見事に大賞受賞したそうです。校長先生にはブログにもあげて頂いたりしました事本人も大変喜んでおりましたので急ぎご報告申し上げます。
 一通の嬉しいメールが届いた。校内メールに美術を担当している先生から、いただいたメールである。修学旅行出発の前日に校長室を訪ねてくれた(Vol.134)彼女のことについてのメールである。あの時は「梱包してしまうので先生にみていただきたくて」という彼女の気持ちが嬉しかった。そのやり取りを知っていて、朗報をいち早く伝えようと考えてくださった先生のこのメールにある「心」がまた嬉しい。この先生、偶然に私と同郷なのである。この近辺の地域で例えるなら、五井と八幡宿ぐらいの近さである。しばらく話しているときっと「そやさかい、おもしろいやんか」と、郷里の小さな地域特有の関西弁が出るはずである。もちろんメールに訛りはない。メールをいただいたのが今週のはじめ。今日は師弟揃って報告に来てくれたのである。
 残念なことに教養に欠ける私に「佐藤太清(さとう・たいせい)」という日本画家がピンとこない。でもおめでとう。先生の高揚した頬の色に「すごい」が滲んでいて、無教養な私にもこれが尋常なことでないことだけは伝わってきた。二人が帰った後、早速ネットで調べてみた佐藤太清賞公募美術展。ワォ、文化庁後援、横浜赤レンガ(横浜市芸術文化振興財団)共催・・・etc。この美術展の一等賞をとったのだ。京都、名古屋、東京、横浜、有名な場所で巡回展示される。絶対に見に行こうと思った。そしてその絵の前で「これ、うちの生徒の作品なんです」とみんなに自慢したいと思った。梱包して、出展する直前の、誰にも公開されていないこの作品を、学校の3階にある美術室で、一番最初に見たのは私なんです。生徒は、わざわざ校長室に作品の仕上がりを報告にきてくれて、梱包の前に見ていただきたいなんてことが言える生徒なんです。この作品の作者。すごいでしょ、いいでしょ。外行く人を無理やり呼び止めて、作品の前に立たせ、思いっきり自慢したくなった。

 創造の君、今ごろ家の水槽にいる黒鯛の幼魚にドジョウを食べさせているのかなぁ?おもしろい生徒である。同郷の師も「ものすごく大きな何かを秘めた生徒です。楽しみにしています」と語っていた。今日も一日いい日になりそうである。いい瞬間(とき)過ごしています。市原中央高等学校。