2019年11月の記事一覧

王冠 ギョギョギョ!のギョ子生徒

11月1日(金) ほぼ毎日・校長 Vol,123 さかなクンの話で盛り上がった

 「おや?君は・・・」後ろ姿しかみたことがなかったが、すぐにわかった。何度か美術の部屋で、大きなキャンパスに向かっている後ろ姿をみたことがある。集中しているので声もかけづらい。立ち並んでいるイーゼルに置かれたキャンパスの隙間から背中が見える。時々小首を傾げて、しばらくするとまた手を動かしている。あまり緻密な描写は、誤解を招きそうなのでこれぐらいにしておくが、とても集中した素敵な後ろ姿なのである。初めて顔(笑顔)を拝見した。おおいにして後ろ姿で作られたイメージは裏切られるのだが、彼女の場合はそれはなかった。こんな話題から、今手掛けている大作の話に至った。制作途中の作品に関わるお願い。そればかりは、私にどうしようもなかった。「ごめんね」と心から謝って、帰ろうとする彼女に興味について聞いてみた。「絵」が返って来ると思っていた予想に反して、「生き物、特に魚が好きなんです」
 この言葉を皮切りに、さかなクンの話になった。彼がまだこんなにテレビにも出ない頃。知り合いの海辺の家の隣に海洋大学の実習所があって、そこにさかなクンは水槽を持っていた。陽気な青年で、私たちの顔を見ると、「海の中はどうですか?」撮ってきた写真を見て「ありゃ〜、ユウゼンの子供ですねぇ」などと話しかけて来る。「ギョ、ギョ」はまだ持ちネタになかったが、「さかなクン」の愛称はもうすでに持っていた。「魚」を語り始めると止まらない。ある時「砂イソギンチャク」の個体識別について問いかけると、「日高さん、苦手なんですボクぅ」と言って悩み始めた。
こんなエピソードを話して聞かせると「えぇ、さかなクンを知っているのですか?」と目を輝かせている。さっきまで少し残念そうに伏せ目がちだった彼女の目がキラキラ輝いていた。「先生!またきていいですか?この部屋に」「いいよ。いつでもおいで」
 見送るといつもとは違う背中、後ろ姿があった。ニコニコしている後ろ姿。いいね。「秋の日はつるべ落とし」すっかりと暗くなった駐車場の向こう側の校舎の窓に、洛陽の最後の光が映っていた。