重要 11−5 Vs 木更津高等学校 part3

7月13日(土) ほぼ毎日校長 Vol.67 外伝(気になっていた生徒)

 一人の選手のことが気がかりだった。誠実な目をした彼は、しっかりと相手を見つめて話を聞くことができる。その視線と目の輝きをみているだけで彼自身の野球への取り組みの真摯さ、いや大きくは「生きる」ことへのまっすぐな姿勢を感得できる。好青年である。最後の試合『彼が報われる結果がでてほしい』と思っていた。彼のことである。たとえ自身にその結果が訪れなくても、チームのため仲間のために全力を尽くせるだろうとは信じていた。大会の少し前に練習試合で指を骨折した。痛い怪我である。肉体的にも精神的にも。察するに辛かった。
 対戦相手も決まった大会直前、挨拶に部屋を訪れた。先に書いたことを聞きづらかった。「とにかく全員野球で頑張ろう。一試合でも多く。決勝で兄弟校と対戦しよう」と声をかけておいた。「ハイ、ありがとうございます。応援お願いします」と応えたのち、しばらくして彼の方から「先生、僕はスコアラーとしてベンチに入れていただけます」と報告してくれた。「よかった」と心から思い、忘れられない教え子のことを語った。「私はその子のことが大好きた。誇りに思う。同じような教え子がまた一人増えたな」と締めくくった。彼と一緒に来ていた生徒の目に涙が浮かんでいた。頑張っても頑張っても結果として報われない者もいる。腐らず、焦らず、諦めず。現実をしっかりと受け止め前に進もうとする。そんな努力の人の存在がわかっているから、その辛さも背負いながら試合に臨める生徒たちである。
 人の痛みをわかる青年たち、その存在をリスペクトできる彼らは強い。力の限りを尽くしてほしい。それが自分自身への正直な姿である。
 今大会初戦の応援をしていて、ベンチを乗り出すようにしている彼の背中を見た。アルプススタンドで背番号のないユニフォームに身を包み、声の限りに応援する者たちの姿に間近で触れた。強くたくましく育っている。市原中央高校生、誇りです。

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