合格 なぜ、おじいさんとおばあさんなの?(悪いことばかりじゃないpart5)

6月3日(水)ほぼ毎日・校長 Vol.169 コロナウイルスが教えてくれたもの

「普通に」「通常に」が、とにかくありがたく感じる。コロナウイルスはそれを奪い去った。100歳になろうかという長寿の母が亡くなった時にも、『あの小言はもう聞けないのか?』まず感じたのがそれだった。「ダメ」を口にする人ではなかったが、説諭されるとけっこう効いたなぁ。当たり前にあることのありがたさに気づかない。コロナウイルスはそんなことに気づかせてくれた。
 初めて登校した1年生にそんなことを語った。今まで常識として疑いもしなかったことが、「なぜ?」を帯びて眼前に立ちはだかる。自分で考え判断して行動する。より積極的にそれに向かう姿勢が要求される時代。それがコロナによってスタートした。
T Vドキュメントでイタリアのおじさん2人が語り合っている。窓から吊るした籠に、わずかな食糧を入れて下げる。職を失った男が感謝の言葉を述べながら、捧げるように両手を上げている。まるで神を拝むように。その籠のおじさんが別のボランティアで頑張っているおじさんに「よくやるねぇ。嬉しい」と語りかけると「やらないでいられる方が不思議だろうよ」と返事が返ってきた。そして「どうだろう、コロナが去った後、俺たち人間は成長しているのかなぁ」と問いかけてきた。籠のおじさん「成長なんていうもんじゃない。新たな人類の誕生、スタートの時さ。今まで(の人間の汚れ)を拭い去って、綺麗な人としての出発だ」T Vの中のおじさん2人の会話を興味深く聞いていた。
「悪いことばかりじゃない」そんなふうに捉えることができない「今」だから、自分の瞬間(とき)を見つめ直してみよう。生徒たちに語った。こんなふうに捉えるとわかりやすいかもしれない。前に座っている3人に協力してもらった。日本昔話の語り方の定番を私と一緒に語ろう。(私)「むかし、むかし」→(生徒A)「あるところに」→(生徒B)「おじいさんとおばあさんが」→(生徒C)「住んでいました」。すかさず尋ねた。「Bさん、なぜ『おじいさんとおばあさん』なの?」会場中が首を傾げている。「永遠の5歳チコちゃんに叱られてしまいそう」クスクス笑いが出た。
こういう問題が山ほど周りにある。今まで考えたこともない、常識として疑いもしなかったこと。突然姿を変えて大問題として取り組まなければならなくなる。そんな時代がスタートした。籠のおじさんがいうほどの「人類の再スタート」もあながち大袈裟でない。そういう時代を担うのは君たちだ。コロナウイルスはそれを教えてくれた。時代を担う力、この市原中央高等学校で培ってください。ようこそI C Hへ。

「悪いことばかりじゃない」そんなふうに捉えることができない「今」だから、自分の瞬間(とき)を見つめ直してみよう。けっこう感動の発見があったりする。