市原中央高等学校に係る週刊誌報道について(お詫びとご報告)

令和4 年12 月21 日

学校法人君津学園


市原中央高等学校に係る週刊誌報道について(お詫びとご報告)


平素は本学の教育活動に深甚なるご理解とご協力を賜り、誠にありがとうございます。
 この度は、一部週刊誌による、市原中央高等学校の校長によるセクハラ疑惑記事の掲載により、関係各位に多大なるご心配をおかけしましたこと、深くお詫び申し上げます。
 本件は、学校の信用を大きく毀損する可能性のある重大な事案であり、報道があった後、速やかに第三者機関である、早稲田リーガルコモンズ法律事務所(以下「調査機関」といいます)に対して本件調査の依頼を行いました。
 この度、調査機関による調査が完了し、調査報告書(以下「本報告書」といいます)が提出されましたので、報告内容を踏まえ、確認できた事実関係及び今後の対応につきまして、以下のとおりご報告いたします。


1 結論
 本校生徒(以下「当該生徒」といいます)により申告された校長の各行為は、一部不適切であるとの指摘はありましたが、いずれもハラスメントには該当しないという認定を受けました。


2 認定された事実とハラスメント該当性評価について
 週刊誌に記載された行為(③④)を含め、本報告書で認定された事実とハラスメント該当性評価の概要は以下のとおりです。


① 当該生徒に対して「背低めだね。ちょうどうちの奥さんと同じくらいの高さだよ。」と申し向けた行為
【評価】
 当該発言は、校長が雑談の話題として身近な人物の身長と当該生徒の身長とを比較しているにとどまり、殊更に性的なニュアンスを含むものとまでは評価することはできない。また、当該生徒と校長は放送室で待機していただけで放送委員の出入りも当然想定される中で、当時当該生徒と校長の直接の接点がまださほど無かったことからすれば、校長が殊更に性的な意図をもって会話に及ぶとは考え難く、当該発言は性的言動にあたるとまでは言えず、セクシュアルハラスメントに該当するとはいえない。
 ただ、生徒の容姿や外見、特にスタイルやプロポーションなどの体形を話題とすることは、場合によってはセクシュアルハラスメントにつながりかねず、また生徒の人格を段損するおそれもある。たとえば、千葉県教育委員会平成 27 年 12 月 14 日付教職員向け「わいせつ・セクハラ防止リーフレット」では、「容姿や年齢、恋愛、婚姻や出産、性的な経験や卑狼な言葉などの発言は、相手が不快にならなければ問題ない」という考え方を注意すべき言動や考え方の例として挙げている。そのため、生徒の身体的特徴に関する話題は、教員として慎重に発言すべきであることは当然である。


② 当該生徒を下の名前で呼ぶ行為
【評価】
 下の名前で呼ぶことそれ自体は性的な言動とまではいえない。校長は、当該生徒以外にも珍しい名前や印象に残る名前、交流のある生徒について、男女を問わず下の名前で呼んでいるとして複数名の生徒の名前をあげることができており、当該生徒について下の名前で呼ぶようになったのも、当該生徒との接点が増えたことと印象的な名前だと感じたことによるものと述べている。
 したがって、校長が当該生徒について、名字ではなく下の名前で呼んだことをもってセクシュアルハラスメントと認定することはできない。
 ただ、近年では職場や学校内で「あだ名」や「呼び捨て」を禁止すべきかどうかについて議論があるように、下の名前で生徒を呼び捨てにすることが必ずしも教員-生徒間の親近感を醸成するものとはみなされていない。 むしろ、生徒を下の名前で呼ぶことが、教員が名前を覚えていない生徒や上の名前に敬称をつけて呼ぶ生徒との間の区別を生じさせ、ひいては当該生徒側が教員に違和感を覚えたり、逆に当該生徒以外の生徒が疎外感を覚えたりすることにつながりかねないとの懸念も存在するところである。本件では、まさにそうした懸念が顕在化した事案と捉えることもでき、この点に関して校長には必要な配慮が足りなかったものと言わざるをえない。


③ 私物のスマートフォンで当該生徒の写真を撮影した行為
【評価】
 校長が私物のスマートフォンで当該生徒や当該生徒を含むグループの写真撮影をしたことについて、いずれも校長ブログや修学旅行の資料収集のためという理由があり、また、殊更に特定の生徒や女子生徒のみを撮影していたというわけではないため、性的な言動であると評価することはできない。実際、校長ブログでは男子生徒・女子生徒を問わず撮影された写真が掲載されており、また、場合によっては撮影した写真をブログ等に使用しないこと自体もありうることであるから、この点の校長の説明に矛盾はない。
 もっとも、撮影した写真の使用目的や管理について、撮影対象となった生徒に十分に知らせない場合や、教員の私物スマートフォン等で写真を撮影した場合に、生徒の側に不信感を抱かせかねないことは否定できない。また、写真撮影に関する学校としての明確なルールが定められておらず、個々の教員によって写真撮影に関する姿勢や考え方、生徒への説明に相違がある様な状況では、撮影された生徒が困惑したり、不安を感じたりする可能性があることは容易に想定できる。したがって、学校での様子を保護者に伝えるためなどの正当な目的があるとしても、最低限、学校として生徒の写真撮影に関する統一的なルールを定めること、および撮影する場面や方法、ブログに掲載する際の基準や配慮などを事前に生徒に説明することは必要であったものと考える。


④ 本校廊下で、校長が当該生徒の背後から近づき、耳元で何かをささやいた行為
【評価】
 当該場面では他の教員を含め 2 0 名程度が同じ場所で作業をしており、かつ当該生徒の目の前でも男女 1 名ずつ (合計 2 名)の生徒が作業にあたっており、そのような多数の関係者がいる中で校長が殊更に性的な意図をもって当該生徒に接近して話しかけたということは考えにくい。また、当該場面では多くの教員・生徒が立って話をしながら作業にあたっていたため、 ガヤガヤした状況であったこと、校長を含め皆がマスクをしていたことから、校長が当該生徒に声をかける際に顔を近づけたとしても、そのことをもって不自然、または性的な行動と評価することはできない。そのため、校長による当該行為は不適切ではあるものの、セクシュアル ハラスメントであるとまで評価することはできない。
 ただ、校長が当該生徒の背後から近づき、耳元で話しかけたことについては、目の前で目撃した生徒が「顔の距離が近すぎる」と感じるような態様であったことからして、不適切かつ不用意な行動であったものと判断せざるをえない。特に、高校生であり女性である当該生徒からしてみれば、大人の男性である校長に、突然真横ないし真後ろから近い距離で声をかけられたら、驚くのは当然であるし、その行為自体に嫌悪感を抱くことも自然である。


⑤ 観光バス内において、検温に際して当該生徒の体温を測り直した行為
【評価】
 校長が当該生徒の検温をやり直したことについては、検温で明らかに不自然に低い数値が出てしまった場合にやり直すというのは自然なことであり、検温を行う趣旨からしても、測りなおすことそれ自体が不適切だということはできない。また、生徒のおでこや首元付近に機械を向ける動作が生じるものの、検温することそれ自体が性的な言動ということはできない。また、校長が当該生徒についてのみ意図的に検温をし直したということはできない。したがって、かかる行為についてセクシュアルハラスメントに該当するとはいえない。


⑥ ハイタッチをした行為
【評価】
 校長が当該生徒とハイタッチをしたのは挨拶時や特定の役割を果たした後など、明確に前の行動に対する反応であることが明らかであり、またその頻度も不自然に多いというわけではない。また、校長は当該生徒にのみハイタッチを求めていたというわけではなく、生徒との交流の中で男女問わずハイタッチをすることはあるとのことであった。このような事情からすると、校長の行為が性的な言動としてのセクシュアルハラスメントにあたるものと評価することはできない。
 もっとも、生徒の名前の呼び方と同様、近年では握手やハイタッチなどの身体的接触を伴う挨拶は、必ずしも教員 - 生徒間の親近感を醸成するものではなく、殊に昨今の新型コロナウイルス感染症予防の観点からも、不必要なボディタッチは避けるべきとされている。特に、教員 - 生徒間の場合、両者の間には必然的に上下関係が生じるため、教員側からハイタッチを求められると、生徒としては内心嫌だと思っていたとしても、容易に拒否することができない。校長としては、あくまで生徒との交流を図り、賞賛や親近感を示す目的であったのだとしても、当時校長に対する不信感を有していた当該生徒に不快な感情を抱かせる行動であったことは否定できないところである。したがって、このような行動についてはより慎重に対応することが望ましい。


⑦ 原稿の完成が遅くなった点及び「(当該生徒)の子分 1、子分 2、子分 3、 子分4 」「女性に怒られるのは久しぶりだよ」「(当該生徒が)こっちを睨んでいる」「(当該生徒)が怒っている」などと発言した行為
【評価】
 (原稿提出が遅れた点について)一般的に生じうる事情といえ、社会通念上許容される範囲を超えた不当な行動とまで評価することはできない。
 しかし、原稿提出後の発言については、本来であれば原稿提出の遅延を詫びるなどの発言をすべきであるにもかかわらず、罪悪感や申し訳なさをごまかすためとはいえ、学校長の原稿を待ちわびていた当該生徒にかけるべき言葉ではない。この発言が当該生徒の人格を否定するもの、または人格的尊厳を侵害する違法なものとまでは言えず、パワーハラスメントと評価することまではできないとしても、この件について何の非もない当該生徒にこのような発言をすることは、教員として不適切であったものと判断せざるをえない。


3 週刊誌の掲載内容への見解
⑴ アンケート用紙の画像について
 週刊誌の記事内に、アンケート用紙の一部が画像として挿入されている部分がございました。このアンケートは一部の教員が独自に実施したものであり、本学は関与しておりません。しかも、週刊誌の紙面上は、当該用紙を部分的に切り取って掲載しており、まるで、当該生徒が、「性的な関係を求められ、不快であった。」と回答しているかのように扱われておりました。
 これは、当該生徒から申告されたこともない、全く事実無根の内容であり、本校の名誉、信頼を殊更に毀損する意図で行われたものと捉えざるを得ません。
 本校としては、このような報道態様について強く抗議いたします。
⑵ アンケート調査の結果について
 学内で実施した全生徒向けアンケートによれば、当該生徒から申告された内容以外の、校長に関する新たなハラスメント申告は全く上がっておらず、週刊誌に記載されていた「学校長のセクハラを疑う声が校内で上がっていた」という事実は確認できておりません。この点については、当該生徒及び保護者の見解とは異なることは重々承知しているところですが、本学が把握している事実は上記のとおりですので、この場を借りて述べさせていただくことと致します。
⑶ 調査委員会立ち上げまでの経緯について
 週刊誌の記事は、調査委員会の立ち上げまでに時間がかかったこと、それまでに本学が何も対応しなかったとして非難している論調で掲載されています。
 しかし、本学は調査委員会の立ち上げまでの間、当該生徒及び保護者との連絡を通じて意向を確認し、慎重に手続きを進めてきたものであり、対応に問題があったとは考えておりません。この点については、当該生徒及び保護者の見解とは異なることは重々承知しているところですが、本学が上記見解を有していることはこの場を借りて述べさせていただくことと致します。


4 今後の対応について
 本件に関しましては、同事務所による調査の結果、「ハラスメントには該当しない」という認定を受けたところですが、本件生徒が校長の言動によって不快な思いをしたという事実及び上記認定事実の一部につき不適切な言動であった旨評価された点(上記認定事実のうち①②④⑥⑦)については、真摯に受け止め、校長に対しては厳重注意をすることと致します。また、今後は本報告書にも記載されていたとおり、ハラスメントの
研修会を開催するなどの具体的な再発防止策を講じて参ります。
 教職員一丸となって、学園の信頼回復に努めて参りますので、変わらぬご支援とご協力を賜りたく、お願い申し上げます。

※令和5年1月12日追記:本件公表文は、令和4年12月19日午後4時頃、事前に申告した生徒の代理人に開示し、同月21日に公表を行う旨告知した上で、予定通り21日に公表しておりましたが、事後に同生徒より、一部修正の要望をいただいため、その要望を一部反映させております。


以上