インフォメーション 「大切」が満ちている

7月20日(火)校長講話 この学校には「大切」が満ち溢れている


写真上、緑のカーテンの収穫物を持ってきてくれた男子生徒、ご馳走様本当に美味しかった
写真下、70キロ級で全ての試合1ラウンドKO勝ち 初代チャンピョン 左は清掃に来てくれていたクラスメイト、エキストラ出演

校長講話

最近自分の好きな風景、空間を知ることがあった。ブラインド越しの柔らかい日差しが、白い壁にシルエットの窓を作り、その窓の中で木の葉と小枝がゆっくりと揺れている。老爺は彼のそばにいる私に語りかけるでもなく、独り言をつぶやく「いい日だ」。幸せが共有されて、彼の視線の先にある風景が、空間が、「瞬間(とき)」が大好きになった。遠い昔のそんな透明な強い経験を、しっかりとした色を着けて認知させてくれたのは、名も知らないボサノバの曲(「音」)であった。東京女子大学の某氏の研究では、聴覚より嗅覚の方がその力は強いのだそうだが、私のこの場合は「音」(聴覚)であった。
誰しもが経験したことがあるだろう。「音」とはそうした力を持っている。それが「絆」で結ばれた者たちの総和としての奏でる音なら、楽曲なら、なおさらである。
これは過日行われた吹奏楽部の第11回定期演奏会での挨拶文である。
30数年前の経験、記憶。話の中に登場する老爺は私の父。彼が亡くなる数日前の出来事。
「こんな風景が好きだったんだ。」「こんな空間を好んでいたのだ。」を気づかせてくれる。今の「音」(ボサノバの曲)
君たちは、何気ない感覚が呼び覚まさせる、目覚めさせてくれる記憶というものを持ち始めていないか。「自身・自分」が出来上がりつつある兆しなのだろうと思う。
触れ合うこと、印象深く刻まれるということ。それは今の君たちにとってとても大切なこと。
この学校にはその「大切」が満ち溢れている。ここ数日でも私は多くを経験している。少し披露しよう。
●コンクールがあるので、まだまだ全力投球していますと語ってくれた吹奏楽の男子。黒いマスクの上に乗せたメガネの奥で、目がいっそう輝くようになってきた。
●ある男子生徒が、「クラスの緑のカーテンに成ったトマトです、キュウリ、ナスです」といって校長室を訪れた。歴史好きの彼の進路についてしばらく時間をもらって話をした。
●帰りのバスに向かう途中で、笑顔で「さようなら」。彼女の頑張りを知っていたので、声をかけてみた。「夏、何を頑張る?」「数学です」ときっぱり。ガッツポーズをしてみせる。
●「写真撮影です」と言って、鉢巻をしてランニングに出かけようとする陸上競技部の彼は、教室前の廊下を通るたびに、黙々と勉強している姿を見せてくれている。
●入学して間もなく、格闘技でオーストラリア遠征をして入賞。今日は、ベルトを持ってきて、ランキングの初代チャンピョンになったと報告があった。心身ともたくましくなっている。
●作成した映像が関東を通過して全国大会準決勝にノミネートされました。「視点」を変えると何か見えてくる。あの発想の転換、よかったです。と報告してくれた放送委員会の女子。よかったね。でも映像はまだ見せてもらっていません。
●梅雨明けの暑い最中、涼を取ろうとしているのだろう。ゴム風船に水を入れて、遠くへ投げている数名の女子。「何しているの?」「遊んでます。ご一緒にいかがですか?」あの後、駐車場に残ったゴム片を、汗だくになって一つ残らず回収していた。かえって暑くなったね。
●毎日自転車で帰宅する女子。バスが出た後に、2人であったり1人であったり。正門で「さよなら」している私と、何気ない会話を1、2分交わしてから帰ってくれる。おかげで。いい1日を終えることができている。
私にとっての「大切」、自身・自分探しの途上にある君たちにとっての「大切」。この学校の日々は「大切」で満ち溢れている。
明日から夏休み。それぞれの夏を、「大切」に過ごしてください。