校長室から

注意 こだわりが生んだ大切なもの

12月17日(火) ほぼ毎日・校長 Vol.148 こちらこそありがとう

 覚えているだろうか、先日このブログ(Vol144)で紹介した彼女。笑顔で部屋に入ってきた。愛犬自慢、拘っているんです、「また来ていいですか?」「ええよぉ」、パラサイトの彼女である。あの時は心底思い詰めたような感じがあった、手元の手帳に大切に挟んだメモを見ながら、確かに涙を流していた。私との会話の中で、自分の思いにスラッシュ「/」を引くように区切りをつけて、しっかり結んだ唇に「決」の文字が浮き出てくるような、キッパリとした表情を見せる。笑顔で「やってみます」。竹を割ったような性格とはこのことを言うのだろうと思った。
 その彼女が、今日は最初から笑顔である。しかし私にはその笑顔が、重い我慢と自律によって裏打ちされていることが見て取れた。笑っているが心が笑っていない。案の定彼女の口からは「ダメでしたぁ」と言う一言。「こんなもんですよね」あらら、こんなに若い頃に「世間」を感じ取らせてしまった。こりゃぁいかんと思った戸惑いは、次の言葉で払拭された。「『なんとかなる』『無理にでもなんとかしてほしい』ではないんです。分かって欲しかっただけなんです、きっと」自分を見つめ直した時にそう見えたのだろう。「それを校長先生がしてくださったので」(←ここ太文字にしたい)そんな風にとってくれているなんて、嬉しい限りなのである。
 康成の「伊豆の踊り子」だっただろうか。「いいひとはいいね」踊り子とその連れの会話の中に、自分に対する「いい人」評価を聞いた主人公は、素直に自分をいい人と感じることができたと言う描写があったことを思い出した。彼女の一言で私は、自分を本当にいい人と、素直に、自分で、照れもなく思っていた。彼女の笑顔も、さっきの笑顔とは違う。心も笑顔になっている。こだわりが産んだ副産物?なのかな。将来彼女もきっとこんな思いをしたりさせたりする経験をしてくれるのだろうな。
 「パラサイト、拘ってね」「はーい」明るく部屋を出て行ってしまった。「また来ていいですか?」「ええよぉ」は、今回はなかった。少し寂しい。

  いい瞬間(とき)を過ごしています。市原中央高等学校生。いいね!

お祝い これもすごいことなのです 英語スピーチコンテスト

12月14日(土) ほぼ毎日・校長 Vol.147 関東大会第3位


 第13回関東甲信越地区高等学校英語スピーチコンテスト(於:宇都宮共和大学)に生徒引率に行っている教員から吉報SNSが届いた。英語コース2年生のJade Alisa Teeさんが、第2部の第3位に入賞した。千葉県で準優勝、嬉しいけど少し悔しい。関東大会では全国に出られるように頑張りたいと語っていた彼女は素晴らしいスピーチを披露したという。全国大会への出場は優勝者のみ。残念ながら彼女は果たせなかったが、新しい目標の一つとしてスタートを切ったという。
 英語コースのグローバルリーダープログラムでの様々な体験が、彼女のスピーチの輝きに現れてきているのだと指導にあたっている教員は語ってくれた。小学生と共に英語で交流の場面でも、笑顔とボディランゲージでわかりやすく会話を楽しんでいる姿を拝見した。

 すごいな。市原中央高等学校。この英語コースの礎のプログラムが、次年度コースとしてスタートする。グローバルリーダーコース楽しみです。期待してください。

具体的な取組はCLCホームページへどうぞ →

お祝い おめでとう!佐藤太清大賞受賞!これ、すごいことなんです。

12月11日(水) ほぼ毎日・校長 Vol.146 こんなにすごい賞だとは思わなかった

校長先生
おはようございます。美術科の●●です。ただいま3年生の▲▲のお母様からお電話頂きました。絵を出品しておりました佐藤大清賞展で見事に大賞受賞したそうです。校長先生にはブログにもあげて頂いたりしました事本人も大変喜んでおりましたので急ぎご報告申し上げます。
 一通の嬉しいメールが届いた。校内メールに美術を担当している先生から、いただいたメールである。修学旅行出発の前日に校長室を訪ねてくれた(Vol.134)彼女のことについてのメールである。あの時は「梱包してしまうので先生にみていただきたくて」という彼女の気持ちが嬉しかった。そのやり取りを知っていて、朗報をいち早く伝えようと考えてくださった先生のこのメールにある「心」がまた嬉しい。この先生、偶然に私と同郷なのである。この近辺の地域で例えるなら、五井と八幡宿ぐらいの近さである。しばらく話しているときっと「そやさかい、おもしろいやんか」と、郷里の小さな地域特有の関西弁が出るはずである。もちろんメールに訛りはない。メールをいただいたのが今週のはじめ。今日は師弟揃って報告に来てくれたのである。
 残念なことに教養に欠ける私に「佐藤太清(さとう・たいせい)」という日本画家がピンとこない。でもおめでとう。先生の高揚した頬の色に「すごい」が滲んでいて、無教養な私にもこれが尋常なことでないことだけは伝わってきた。二人が帰った後、早速ネットで調べてみた佐藤太清賞公募美術展。ワォ、文化庁後援、横浜赤レンガ(横浜市芸術文化振興財団)共催・・・etc。この美術展の一等賞をとったのだ。京都、名古屋、東京、横浜、有名な場所で巡回展示される。絶対に見に行こうと思った。そしてその絵の前で「これ、うちの生徒の作品なんです」とみんなに自慢したいと思った。梱包して、出展する直前の、誰にも公開されていないこの作品を、学校の3階にある美術室で、一番最初に見たのは私なんです。生徒は、わざわざ校長室に作品の仕上がりを報告にきてくれて、梱包の前に見ていただきたいなんてことが言える生徒なんです。この作品の作者。すごいでしょ、いいでしょ。外行く人を無理やり呼び止めて、作品の前に立たせ、思いっきり自慢したくなった。

 創造の君、今ごろ家の水槽にいる黒鯛の幼魚にドジョウを食べさせているのかなぁ?おもしろい生徒である。同郷の師も「ものすごく大きな何かを秘めた生徒です。楽しみにしています」と語っていた。今日も一日いい日になりそうである。いい瞬間(とき)過ごしています。市原中央高等学校。

お知らせ Eigo De Kouryu グローバル・リーダーを目指して

12月10日(火) ほぼ毎日・校長 V0l.145 英語コース2年 海上小学校の生徒と交流
 この日、昼休みから午後の1時間を使って、本校英語コースの2年生が海上小学校に行って、英語で異校種交流を行った。海上小学校は市原市が小規模特認校として特色ある教育を展開している学校で、造形教育、外国語教育推進校として、地域社会との連携を深めている。近年ではその先進的な取組と、研究実績を上げてきたことの功績が評価され、「教育功労賞 学校教育 団体の部」を受賞をしている学校である。
 地域で学ぶ高校生が、地域の子供(小学生)と触れ合う機会。それも生徒たちで企画して、「小学生が英語に興味関心を持って、楽しく過ごしてくれるにはどうすればいいだろう」を具体的なものにして実践する。日頃から行っている4つのP(project、peers、passion、play)の実践である。「みんな、今日はハリーポッターゲームをやるよ。ルールは簡単・・・」英語で語りかけ、説明する。三つのグループに分けた小学生は、体育館中を走り回り、passionとplayに満ちた時を過ごしていく。中にはノリの悪い仲間に声がけをしている小学生が出てくる。本校の生徒がそれを見ていてそっと寄り添い盛り上げている。ゲーム終了後は、1対1の英語会話。いい瞬間(とき)を過ごしていた。

 「同僚支援」「率先垂範」「方向性指示」、リーダーシップをちゃんと身につけ始めている。市原中央高等学校の生徒ってすごい。

 

! こだわっています

12月05日(木) ほぼ毎日・校長 Vol.144 先ずはワンコ自慢から


 予約の彼女がやってきた。今週の月曜日、日も暮れて寒さを感じ始めるころ。一人の女子生徒がやってきた。「あぁ、ごめんね。これから職員会議で・・・時間がないんだよ」うつむいて「少しの時間でもダメですか?」深刻な雰囲気である。「じゃぁ10分ね」本当に時間がなかったので、10分のお約束。見事に自分の辛い?悲しい?苦しい?痛い?思いをわかりやすく語ってくれた。なるほど、聞いていて深刻である。このまま置いていくのも?と思いながら、「会議が終わるのを待っているかい?」と尋ねると、いつか時間をとってほしいと素直な気持ちを言葉にした。それが今日のお昼休み。
 昼食も摂らずにやってきた。「ありがとうございます」という言葉がドアの内側に入ってきた。気持ちを和らげようと、うちの犬(ジュニアくん)の写真。「可愛いだろう。先生メロメロなんだよ」と語ると、彼女も9歳になるチワワとポメのミックス犬の写真を見せてくれた。マーブルのコートが美しいわんちゃんだった。「いいね、愛情たっぷりの子だね。飼い主さんの愛情がそのまま表情に出ている」
 お互いのワンコ自慢で雰囲気を和らげて、本題に入った。そうなんだよ、君たちぐらいの歳までは、さっきのワンコと同じように、愛情たっぷりの経験をしなければいけないんだよ。果実が太陽の光をいっぱい浴びて甘く美味しくなるように。その意味ではキミの経験は、ズキズキと疼(うず)く傷跡がついたかもしれないね。先生は、いま一生懸命その傷に軟膏を刷り込んで、少しでも痛みが和らぐようにしているんだけれど、利いていますか?「先生、ありがとうございます。このことがあってから、色々な先生が関わってくれて、いっぱい軟膏を塗ってくれたような気がします。痛み残っていません」と答えてくれた。「でも、こだわりがある。つまらないことなんですが、こだわりがあるんです。自分で納得のいく方法見つけてやってみます。ダメだったら、また来ていいですか?」「ええよぉ」
 なーんだ、いい環境でいい瞬間(とき)の学校生活を送っているんだ。よかった。彼女はドアを出ていく時に語った。「先生、私パラサイト(寄生虫)に興味があるんです。大学で勉強しようと思っているんです。」
 ほぉ、「パラサイトが地球の危機を救う」頭の中に奇妙なキャッチフレーズが浮かんだ。???なんだか、市原中央高等学校って面白い。

花丸 やはり日本はすごい国だ

12月05日(木) ほぼ毎日・校長 Vol.143 おもてなし

https://www.youtube.com/watch?v=6hggygKWwhg
YouTube ANN・News「滝川クリステルさんのプレゼンテーション」から

 この写真の切り取り。女性の手の配りを見て、誰しもが同じシーンを想像するだろう。そう2013年に、ブエノスアイレスで来年(2020年)のオリンピック開催地を決めるオリンピック委員会の総会が行われた。滝川クリステルさんの東京プレゼンテーションの「お・も・て・な・し」の瞬間である。彼女は語る。「東京は安全な、思いやりのある都市です。あなたが何かを失ったとしても、それはきっとあなたの手元に戻ってくるでしょう。」
 このプレゼンに、ある評論家は「うそ」を指摘する。今時の日本を・・・という寂しい見解である。しかし「寂しい」と感じながらも、「確かに」と首肯する自分がいることに気づく。ところがこの滝川さんの「お・も・て・な・し」を身をもって体験した生徒がいる。過日行われた修学旅行で、数万円の現金の入った財布を失った。どこで失ったかわからない。記憶を辿っても行き着かない。落胆しながらも、仲間の助けを借りて旅行を満喫して帰ってきた。しばらく経ったある日、旅行先の警察署から財布の拾得があったという連絡がこの生徒の元に届いた。全て失った時のまま。現金もカードも、全てが揃って手元に戻ってきた。安全な、思いやりのある国の「お・も・て・な・し」をいっぱい詰めたお財布が帰ってきた。
 「すごい」と感じたのは、財布が戻ってきたことだけではない。この経験をしたこの生徒の成長に目を向けてみよう。きっとよほどの大きな「裏切り」がない限り、この生徒は経験を行動規範として持つことだろう。同じようなシチュエーションに逆の立場で遭遇した時、この生徒はきっと内面にある「お・も・て・な・し」を発現するに違いない。潜在的な意識、善行としての「お・も・て・な・し」、それを何気なく身につけさせる文化や環境がこの国にはある。すごい。

 いい成長しています。市原中央高等学校生。いいね。

お祝い 訪れた彼の目的は・・・

11月29日(金) ほぼ毎日・校長 Vol.142 行ったんですね名古屋城。いいなぁ


 このブログに何度も登場している(母とも一緒に登場している)歴史研究部の彼がやってきた。手にしているのは「合格証書」。難関の大学、尊敬する教授のいる希望の大学の合格証書である。あの時「受験報告ではなく合格報告にきて欲しいなぁ、そうあってくれるとなお嬉しいな」と語ったことを覚えていて、きてくれたのである。「おめでとう」の一声で迎えた。
 ところが彼の口から発せられたのは、「校長先生、行ったんですね名古屋城。G20の関係で無理かと思っていたのに、行けたんですね。」であった。本題であろう「合格」とそれに関わる話を・・・と思っても、「あの天守閣は、今度木造建築・・・」「戦火で焼失して以来・・・」「今は入れない天守閣の・・・」矢継ぎ早に出てくる。彼の「城」に関する興味関心はすごい。興味関心だけでなく並外れた知見を有している。「えぇ、ブログの写真、記事無くなったんですかぁ?残念」話が尽きないのである。
 しばらく彼のお話しに付き合いをさせていただいて、合格証書を手に一枚パシャリ。下宿はどうする。「大学から一駅離れたいいアパートが見つかったんです。決めてきました。」『きっと母は泣いたんだろうな』と思っていると、その思いを察するように、「在学中は何度も母にきてもらおうと思います。古都の観光を4年間でいやというほどしてもらいます」と言葉をかけて部屋を後にした。

 大学進学の頃に母に対してこんな気持ち持っていたかな?拙かった自分のそのことと比べて、人間的にもいい成長していると感じた。いい成長をしています生徒たち。市原中央高等学校、いいね。

花丸 この日の彼女は笑顔だった

11月28日(木) ほぼ毎日・校長 Vol.141 よかったね いい思い出にできて

 一人の女子生徒が、担任の先生と一緒に校長室にやってきた。入ってくるなり笑顔である。「ありがとうございました。おかげさまで・・・よかった。・・・嬉しかった。」
 彼女と話をしたのは夜の帳の降りた琵琶湖畔。修学旅行のディナークルーズ船に乗り込む列の中。話しかけてくれた。「今度、校長室に伺っていいですか?」「ええよぉ」関西の空気を吸った途端、DNAに組み込まれた関西の血が蘇る。自然に関西のおじさんになっている。船の逆光でシルエットでしか見えなかった彼女の横顔だが、妙に印象に残っていた。
 翌日の宿のロビーのソファで、大粒の涙を流している女子生徒。見るなり昨夜の女子生徒だとわかった。「君かぁ。どうしたの?」絞るように泣きじゃくりながら事情を話してくれた。涙の質を本人もわからなかっただろう。「ごめんなさい」我にもあらず受難者となった彼女は、その心を「申し訳ない」という気持ちでいっぱいにして、何層もの感情が折り重なった重みに潰れそうになって、それがフローして涙になって、瞳からボロボロこぼれ落ちている。
 エンパシーとシンパシーの話。こんな時にそんな難しい話はいらない。「ごめんね」と相手の気持ちを察しているだけでなく、「ごめんね」が向けられる相手の心に感情移入をしてみよう。今君が受難者となったことを友人たちはどう思っているだろう。誰も悪くない、悪くないけど彼女の身の上に難が降りかかった。そんな状況の中で、受難者本人が「申し訳ない」と思って塞ぎ込んでいる。余計に辛いのでは?「さっきはごめんね。心配かけてごめんね。でも、もう大丈夫。楽しう」と言ってくれた方がずっといい。顔をあげて、笑顔になってエンパしーを実行してみよう。そんな意味のことを語った。
 強い子だった。まだ涙の止まらない瞳をこちらに向けて、こくりと小さくうなずいた。よかった。彼女のバッグにBob'sBearTim(ティム)がぶら下がっていた。一つ年上の姉が土産に買ってきてくれたのだと教えてくれた。
 「校長、いい子だねぇ」Tim(ティム)が、小さなピンクの舌をぺろりと出して、語りかけているように思えた。いい生徒が集っています。市原中央高等学校。自慢です。

お辞儀

ほぼ毎日・校長 Vol.136〜140は欠番です